エモい心理学

こころってやつは。エモい、つまりエモーショナルな心理学論文を書き溜めています。

「地面を熱したフライパンの上だと思って走る」

少し前になるけれど、21_21 DESIGN SIGHTの「アスリート展」(21_21 DESIGN SIGHT | 「アスリート展」 | 開催概要)に行った。

 

受付で学割の入場料を支払った後、21_21 DESIGN SIGHTでは最初に階段を下ることになる。

なぜ最初に階段を「下る」のだろう。いつも腑に落ちない。

そんなことを考えながら、下った先の暗幕を抜ける。

最初に目を奪われたのは、以下のような映像だった。

 

フライパンに溶かしたバターと、トラックを走る黒人選手が映し出されている。

その下には、地面を熱したフライパンの上だと思って走る」という言葉が添えられていた。

おや、と思っていると映像が切り替わった。

今度はフェイスマッサージを受けている女性と、テニスラケットを持った男性が映し出されている。

その下には、「ほっぺたを撫でるように打つ」という言葉が添えられていた。

 

どうやら、例えをうまく使って説明したほうが運動イメージが湧きやすいということらしい。

この展示物の説明欄には「アナロジーラーニング」とあり、「選手がコーチから技術的指導を受ける際に使われるコーチング技術」とのことだった。

 

このような運動イメージについて、直接関係あるかどうかは全く不明ではあるが、面白い論文を見つけたのでここに書いておきたい。

Myung, J. Y., Blumstein, S. E., & Sedivy, J. C. (2006). Playing on the typewriter, typing on the piano: manipulation knowledge of objects. Cognition98(3), 223-243.

 

論文の内容

実験者らは、 単語によって引きこされた運動イメージは、類似した他の運動イメージに影響を与えるのではないかと考えた。

 

例えば、「ピアノ」は「タイプライター」の運動イメージに影響を与えるかもしれない。「ピアノを弾くこと」と「タイプライターを打つこと」は同じ運動イメージが表象されるからである。一方で、「ブランケット」は「タイプライター」の運動イメージに影響を与えないかもしれない。「ブランケットをかける」と「タイプライターを打つ」は同じ運動イメージが表象されないからである。

 

この仮説を検討するために、実験者らは語彙判断課題を実施した。

この課題では、呈示された単語が有意味単語(例えば「ピアノ」)か無意味単語(例えば「ノピア」)を識別するよう求められる。有意味単語であればボタンを押し、無意味単語ではボタンを押さないといった具合である。

 

実験者らは、「ピアノ」と「タイプライター」といったような運動イメージが関係すると思われるセット、「ブランケット」と「タイプライター」といったような運動イメージが関係しないと思われるセット、「ピアノ」と「ノピア」といったようなそもそも無意味単語が含まれているセットを0.05秒間隔で組んで、音声で実験参加者に呈示した。

 

その結果、運動イメージが関係するセットのほうが一致しないセットよりもボタン押しの反応が速かった。

 

この結果は、単語をみるだけでも運動イメージが生じており、かつ他の行為にも影響を与えることを示している。

 

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        左:運動イメージが関係するセット 右:運動イメージが関係しないセット

                     縦軸はボタン押しの反応時間

感想

もちろん、「熱したフライパン」は熱い。

熱いから地面に長くは触れていたくない。そうすると、素早く足を動かすといったような運動イメージが引きこされるだろう。その運動イメージは、速く走ることに影響を与えるのかもしれない。

 

それと同時に、21_21 DESIGN SIGHTの最初の階段を思いだす。

もしかしたら、あの階段には運動イメージによる巧妙な仕掛けがあったのかもしれない。

階段を下るということは、スマホをスワイプすることに似ている。

その先に興味があるときに下へ向かうように、下へ向かうということはその先への興味を抱かせることになる・・・・・・。

 

おしまい。