エモい心理学

こころってやつは。エモい、つまりエモーショナルな心理学論文を書き溜めています。

マンガでよく見かけるこういった線の不思議

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不思議。マンガの表現って不思議。

誰かに教わることもなく、描写された野球ボールが右から左へと放たれていることがわかる。右に添えられているのは、単なるの不揃いな横棒線の集合。なのに、この野球ボールが右から左へと放たれていることがわかる。もう、野球ボールが右から左へと放たれてるようにしかみえない。現実には、こんな不揃いな横棒線の集合は全くみえないのに。

 

そんなわけで、今日はマンガにおける線型表現についての論文です。

マンガだけに、日本人による研究となっています。

林聖将, 松田剛, 玉宮義之, & 開一夫. (2013). マンガのスピード線の視覚的効果. 認知科学, 20(1), 79-89.

 

 

論文の内容

著者らは、この野球ボールの線型表現によって引き起こされる空間的な注意について着目しています。ざっくりいうと、人ってボールが進行する(ようにみえる)方向へ素早く注意を向けやすいんじゃないかという仮説をたてました。

 

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どうやって上記の仮説を証明すればよいのでしょうか。

著者らは、コンピュータープログラムを用いて、上記のような手続きをとりました。まず、注視点(Fixation)で実験参加者の視線がブレないよう制御します。

 

次に、手がかり(Cue)で例の野球ボールによって注意を操作します。ここが、仮説検証のためのポイントとなります。その後、実験課題(Target)で「*」を出現させた上でそれに対するキーレスポンスによる反応時間を測定しました。

手がかりでは、「三〇」だけではなく「〇三」と示される場合や何も示されない場合があります。なので、実験参加者にとってはどちらに注意が操作されるかはランダム状態になります。また同様に、実験課題では右側だけなく左側にも「*」が出現し、「*」の出現位置に対応する左右キーを押すよう教示されているので、こちらも実験参加者にとってはランダム状態になります。

ですので、「三〇」が出た方向に「*」が出現する(右側に「*」)一致条件、「三〇」が出た方向とは逆方向に「*」が出現する(左側に「*」)不一致条件、そしてそもそも手がかりが示されない統制条件が設けられたことになります。

 

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実験の結果、一致条件のほうが不一致条件や統制条件よりも「*」への反応時間が速いということが示されました。このことから、マンガでみられる線型表現は、物体の運動方向を認識させ注意をその方向へと誘導させるということが示唆されました。

著者らによると、実験参加者らはマンガを読んだことがある人たちだったので、線型表現による注意の誘導が、生まれながらにして身についているものなのか、経験的に身についたものなのかが不明であると述べています。

 

感想

不思議。マンガの表現って不思議。

人ってマンガで物体をみるとき、主観的に「マンガの中で動いているということなんだな」というわけではなく「マンガの中で動いている」と認識していることになりそうです。

 

他にも、マンガでみかける怒りマークとかも不思議。なんであれで怒っているように認識してしまうのか。ちなみに、キャラクターの頭に付帯しがちなあのマーク、漫符(まんぷ)っていうらしいです。

 

表現を科学するっておもしろい。

 

 

おしまい。